球磨川沿いを歩く(2)葉木駅~坂本駅
桜の季節到来。球磨川沿いの坂本町には国道沿い、荒瀬ダム湖岸とあちこちに桜が植栽してあって、この季節車で通っていても、桜に目を奪われてしまいます。
そんな3月27日、葉木駅から坂本駅までの約5km、球磨川の右岸を葉木ー佐瀬野ー大門ー藤本ー松崎と歩いてみました。桜はほぼ満開です。
葉木駅
葉木駅です。小さな駅で構内は少し殺風景ですが、ホームから見る景色は、懐かしい昔を思わせる雰囲気で、SLがとても似合いそうです。駅の向こうに見えるのは、ボートハウスです。
葉木という地名は川の合流点を意味する「ハキ(吐く)」から来たとされていますが、対岸にも破木と集落があります。昔八代に来た時、葉木の方に効くと、「あっちは破れはぎたい」という説明を良く受けていましたが、こちらは「はき」ではなくて、「はぎ」と濁るようです。どちらも、肥薩線が開通するまでは舟運の要所で、多くの住民が舟運に従事していたようです。人吉から八代まで舟で下るのに3日、その一日目の行程の終点だったようですから、宿泊施設もあったに違いませんが、今はその面影は殆どありません。
SL撮影のスポット
川沿いに並行してずっと線路が走る球磨川沿いは、SLファンにとって格好の撮影場所のようです。特にSLが走る土日・休日は大きなカメラを抱えてた人たちをたくさん見かけます。上りのSLが通るのは午後4時頃ですが、まだ2時だというのに、すでに待っている人たちを結構見かけました。
他の方のブログを見ると、「来年からダム撤去が始まるので、桜の季節にダム湖沿いを走るSLを撮るラストチャンス」というSLファンの写真がアップされていましたが、そういうこともあって、この季節ことさら多く感じたのかもしれません。このあたりの川沿いにはツクシイバラも自生しています。散歩や写真撮影を楽しむには、もう少し分布を広げてほしいなと思いながら歩きました。
葉木橋
対岸の破木とを結ぶ橋で、昭和53年に竣工されました。それまでは両集落間には渡し船が利用されており、その渡し船乗り場は現在も葉木橋の上流側に見ることができます。
葉木橋から下流の右岸には、ダムのゲート全開後出現した河原が500m程、ずっと佐瀬野集落まで続いています。昔はこのあたりは深淵や多くの瀬があったようです。初めてゲートが全開された時には、おびただしい堆積物がありましたが、除去作業と自然流下により、今はきれいな砂地の河原に変わっています。川沿いに砂の上を歩いても心地よさそうです。しかし、ダムが撤去された後はずっと水位が下がりますので、また昔ながらの淵や瀬が復活し、急流が出現するのかもしれません。
葉木橋から続く佐瀬野の河原です。右岸から上流をみたところで、葉木橋が見えます。このあたりもSLの撮影ポイントのようで、休日には多くの人がカメラを抱えて待機しています。
佐瀬野のお堂
何が祀ってあるのか分かりません。名前の表示がどこにも見当たりません。坂本には観音様や薬師様など沢山のお堂があります。どこも大事にされているようです。植栽木の手入れも良くされています。日曜日ともなれば、隣接するゲートボール場でゲームを楽しむ人の良き休憩場となっています。
荒瀬ダム
上流側の佐瀬野から見た荒瀬ダムです。全開したゲートから向こうが見えるのはいつ見ても、明るい未来を見るようでうれしいものです。来年の今頃は撤去が始まります。撤去後の景観を想像しながら歩きます。
荒瀬ダムの下流です。1年前までは流れが殆どなかったところです。今はごうごうと音を立てて流れています。右手にある岩には、「一の岩」「二の岩」「亀岩」と名が付いています。どうして「三の岩でなく、亀岩なのだろう」とその形に亀を探しましたが、見つけることができませんでした。ダムが撤去されて水位が下がると、亀が姿を現すのかもしれません。
ゲート全開後のこのあたりでは、いつもコサギやコガモ、カイツブリなどの水鳥を見ることができますが、この日はカンムリカイツブリも来ていました。
神田工業横の桜
荒瀬ダムを背にしながら、南に進むと、少し川沿いから離れます。神田工業横の桜がきれいです。右手のアラカシやヤブツバの木陰下の土手にはスミレやキランソウ、タツナミソウも春が来ていることを、控えめに、それでもしっかりと主張するように咲いています。カワラヒワも「春は俺のものだ」と言わんばかりです。コゲラやウグイス、シロハラの声を聞きながら、気分爽快です。
大門の河畔の桜
神田工業を過ぎると、再度川沿いに歩くことができます。いつも対岸から車を走らせながら見ているこの大門の川沿いの桜。対岸からみるのと、その下を歩くのでは全く違います。お勧めの散歩路です。橋が出来るまではここにも、渡し船の発着場がありました。
日曜日だというのに、誰も歩いている人もなく、ウグイスのさえずりと川のせせらぎの音をBGに、一人でこの贅沢な空間を楽しみながら歩きました。
おやくさん
川沿いの道を離れ、藤本小学校(今は廃校)の後ろを通って県道に戻る途中に、「大門の薬師堂」があります。地元の人は「おやくさん」と呼んでいます。お堂の中には天井から鰐口がかけてあります。鰐口というのは金属製の音響具で、鰐の口の形をしていることから鰐口と呼ばれるようですが、もともとは神社等に奉納されるために作られたようですが、合戦の時の合図に使われたり、戦利品として持ちだされたりすることが多かったとその説明板にあります。坂本にはことのほか、この鰐口がかけられているお堂が多いようです。
懐かしい里の風景
まるで、「小さな時に故郷のお婆ちゃんを訪ねてきたことがある」と思いたくなるような懐かしい故郷の春がそこにありました。「ただいま~」と声かけたくなります。
➓五社宮
藤本地区にある「藤本五社神宮」です。大きな杉の木が仁王様のように、お宮を守っています。杉だけでなく、クスやイチイガイカシなど他の木もみな巨木で、太古の昔からそこにあったように立っています。ここの森は八代市指定の天然記念物に指定されています。裏手は球磨川がすぐ傍に流れていて、昔は船頭衆がイチイガシの根元に開いた祠で休憩をしていたといいます。桜満開の坂本町の中で、ここだけは凛とした空気に包まれています。
⓫藤本発電所
荒瀬ダムで取水された水は、約600mm下流にあるここ藤本発電所に送水され、発電機を回してきました。今は人影もなく、ひっそりとしています。ダム撤去に関連して、この施設も撤去される予定となっています。
⓬いんぎゃりの瀬
219号線と坂本の中心部を結ぶ坂本橋が見えるともう坂本です。右手に見える建物が昔の坂本村役場、今は八代市坂本支所です。球磨川のこの場所は広い中州を挟んで左岸側には「う瀬」と「いんぎゃりの瀬(犬返りの瀬)があり、昔は舟下りの難所だったようです。右岸側は昔は緩やかな流れだったそうですが、今は左岸より大きな瀬が出来ています。昔は右岸は広い河原があり、舟に積み下ろし場で「江子の舟留まり」と呼ばれていました。
これらの瀬を見ながら川に沿って歩き、道が川傍から少し離れると、そこはもう坂本駅です。
今日のこのコースは、桜の季節にお勧めの散歩コースです。4時頃坂本駅に到着すると、ちょうどSLが停まっていました。熊本方面に帰るのであれば、SLを予約しておくと、楽しい旅の終わりとなりそうです。
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