国内外のダム撤去

2011年10月27日 (木)

コンジットダム撤去ーアメリカ、二番目に大きなダム撤去開始

アメリカはこの秋、本格的な大型ダムの撤去の時代に突入しました。9月中旬に撤去開始されたエルワ川の二つのダム撤去に続き、昨日10月26日はコンジットダムが撤去開始されました。

コンジットダムとは

Conditdam1 コロンビア川とホワイトサーモン川(流域面積は約1002km²)の合流点から5.3kmのところに1913年に建設された堤高約38m、堤幅約122mの発電ダムです。30㎞にも及ぶサケやスチールヘッド、ヤツメウナギなどの生息地や遡上を阻害しているとして、魚のために撤去される計画としてはアメリカで2番目に大きなダムです。ダムが建設される前は、サケの成魚は8000匹ほどいたといわれています。

⇒learn more about Condit Dam

撤去の方法

撤去の方法は、昨日下部を爆破によって穴をあけられることから始められました。約320キログラムのダイナマイトが今回使用されています。開けられた3.6×5.5mの穴からは、98年分の土砂が6時間で一気に放出されるといいます。

爆破されると濁水が一気に流れだし、水位も見る見る間に下がっていきます。支流にあるダムで下流に人家とかないにしても、ダイナミックな撤去方法にはびっくりです。

サケなどはあらかじめ捕獲され、上流に放流され、ダム湖の水位も下げられた上で行われています。

撤去費用は約25億円で、2012年8月に撤去完了予定です。

今後の予定

今冬は、撤去工事は行わず、サーモンの活動や堆積物が安定するのを待ち、来年の春に残りのダム本体を撤去する予定です。

この流域も昔はヤカマ族がサーモンを捕って暮らしていました。彼らもまた川が復活して、サーモンが戻ってくるのを楽しみにしています。

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2010年4月 7日 (水)

アメリカのダム撤去事例(3)-トゥーマイルダム

トゥーマイルダムの撤去

トゥーマイルダムはメキシコ州サンタフェ川に1894年に建設され、1994年に撤去されたダムで、高さ約26m、幅220mと、荒瀬ダムとほぼ同規模のダムになります。撤去された一番の理由は、ヒビが入ったことにより、その安全性が問われたことです。

どういうダムであったか、WEB上で写真を見つけることはできませんでしたが、そのダム撤去に関しての情報を紹介します。

撤去までのプロセス

トゥーマイルダムはサンタフェ市(人口約4万人)のすぐ近くにある企業所有のダムで、、市民に水を供給してきました。しかし、ダムに亀裂が入り調査した結果、ダムの下に活断層があることが分かりました。もしダムが決壊した場合の責任や、修理をしたり、撤去して別の場所に移転するなどの対応策が検討されましたらが、ダム撤去が一番コストがかからないという結論に達し、撤去が決定されました。

市民にも計画は公表され、公聴会なども開催されています。1994年、雪解けの季節が終わるのを待って、5月1日から撤去事業が始まっています。重機を利用して撤去が行われています。撤去費用は、環境や地質等の調査費用、また撤去後の再生計画などすべてを含め320万ドルかかっています。撤去費用はすべて、所有者が負担しており、水道料金に若干の跳ね返りがあっています。

撤去の意義

撤去後の護岸は浸食を防ぐために、緑化が施されています。また、ダムサイトであったところの一部には、小さな池と湿地がつくられ、そこや水鳥や他の生き物の生息場所になっています。しかし、ダムサイトは住民にはまだ開放さておらす、自然公園や自然保護区にする計画にはなっているものの、1999年時点では、まだ実現していません。

トゥーマイルダム撤去の意義について、アメリカンリバーズ(保護団体)は以下の3点をあげています。

①国内の老朽化したダムは、トゥーマイルダムと同じような危険性を孕んでいる可能性があることを指摘した。

②ダムの安全性を考えて、所有者自身がダム撤去の方が、その他の方法より費用の面からも安くつくと判断した、素晴らしい事例となった。

③そして、その撤去費用に税金を投入するのではなく、所有者が負担した事例となった。

撤去のメリット

○ダムの危険性の除去

○ダムの修理など維持管理費の削減

○水鳥や他の生き物の生息地の回復

(参照:Dam Removal Success Stories)

・・・ダムの撤去前と後の写真等を見つけることができなくて、残念です。

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2010年4月 5日 (月)

アメリカのダム撤去とその恩恵

アメリカにおいて、これまで建設された高さ6m以上のダムの数は、75000基と報告されていますが、6m以下のものを入れたダムの総数は、実に250万にも及ぶと言われています。これは、独立宣言以来、毎日1日に1個づつのダムが建設された計算だということです。開拓時代に、未開拓地に入植したパイオニアが、個人的な利用のために川をせき止める構造物を造ったことが始まりのようです。

アメリカでは、すでに700を超えるダムが撤去されています。日本では、アメリカの撤去されたダムはほとんどは小さいという報告がよくされますが、高さ12以上のダムでも40以上のダムが撤去されておりその中で、36m以上のダムも4つあります。そんなアメリカのダム撤去の実情をちょっと紹介です。

撤去されたダム様々(1999年、アマリカンリバーズの報告書参照)

○最も古いダム撤去は、記録にあるものは、1912年のデッドリバーのマーケットダム撤去です。数の上では、1980年代(92基)、1980年代(177基)に多くのダムが撤去されています。

○撤去されたダムの種類も、木枠組みや石積みの簡単なものから、ロックフィルダム、重力式コンクリートダム、コンクリートアーチ式ダムまで、様々です。

○ダムの当初の目的も、治水、利水、発電、リクレーションなど、多岐に亘っています。

○撤去されたダムが多い州は、ウィスコンシン州(73基)、カルフォルニア州(47基)、オハイオ州(39基準)、ペンシルバニア州(38基)、テネシー州(25基)などです。

○一番高さが高いものは、48.8mで、一番低いものは60cmです。また、堤長は平均51m。一番長いものは323mで、短いものは3mです。

ダムの撤去費用

撤去費用は、1999年の報告書では、一番安いものは、たったの1500ドル(約15万円:現在の為替レート)で、高いものはサンタフェ川のトゥーマイルダム(高さ25.5m、長さ216m)の320万ドル(約3億円:1994年撤去)やケネベック川のエドワーズダムの210万ドル(約2億円:1999年撤去)と報告されています。

これからすると、荒瀬ダムの撤去費用は、撤去方法に違いがあるとしても、けた外れに高額に思えます。

アメリカで、間もなく撤去されると予定の、マチリヤ川マチリヤダム(高さ57m、幅186m)の撤去費用は、その撤去方法により、約22億円から196億円の開きがあるといいます。その差は、ダム湖の堆積土砂の除去方法の違いに大きく左右されるようです。すなはち、自然流化させる場合が一番安く、パイプラインで、海まで堆積物を運ぶ場合はコストが高くなるといいます。

荒瀬ダムの撤去費用91億円のうち、これまでに20億円が支出されていますが、そのうちの半分10億円は土砂の除去費用です。地元の方たちは、自然流下で構わないレベルと言います。本当に必要なコストかどうかは、再考する必要がありそうです。

ダム撤去がもたらした恩恵

多くの事例報告から、ダム撤去がもたらした恩恵は、以下のようにまとめられています。

①生き物の生息環境の復元

②水質の改善(著しい)

③回遊魚の往来の実現

④絶滅が危惧された魚種の増加

⑤ダムの維持管理や関連コストの削減

⑥税金の節約

⑦川の景観改善

⑧釣りの機会増大

⑨住民の川へのアクセス性の改善

⑩公園などの新しい利用のための土地出現

⑪水辺のリクレーションの機会増大

⑫観光事業の増大

・・・・総合すると川の再生と、それによる地域の活性化が撤去のメリットということのようで、すべて荒瀬ダムにも当てはまるようで、撤去後が本当に楽しみです。

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2010年4月 3日 (土)

アメリカの撤去事例(2)-エドワーズダム

荒瀬ダムの撤去が決定し、蒲島知事は、撤去工法を決定するために「技術研究委員会」を設置、7月までに安全・環境の面から撤去計画を策定すると発表しています。しかし、荒瀬ダムは近年では国内初のダム撤去となり(昭和30年代に宮崎の轟ダム撤去が実際の全国初ダム撤去)、撤去の参考とする事例がありません。一方、アメリカには多くの撤去事例があります。アメリカにおいて蓄積されたデータ・報告なども参照して、住民参加の手法等含め、学ぶべきところは学んでほしいと思います。

撤去事例(2)エドワーズダム

エドワーズダムは、アメリカメイン州オーガスタのケネベック川に1837年に建設された高さ7.3mの発電ダムです。老朽化の問題もありますが、連邦政府が、発電による収益よりもダム撤去による健全な川が環境にもたらす恩恵の方が大きいと判断して、撤去命令を出した最初のダムとして注目されました。1999年に撤去されています。Edwards_dam

高さは、荒瀬ダムよりかなり低いのですが、それでも撤去による回遊魚の再生や地域の経済効果など、撤去は地域社会や河川環境に大きな変化を与えています。

エドワーズダムとは

エドワーズ織物工業に電力を供給するために、1837年に建設されます。1980年にエドワーズ工業は工場を閉鎖しますが、電力会社との契約によって、発電事業は継続されてきました。1990年代初め、水利権の許可期限が切れ、1年ごとの更新で許可は継続されてきました。しかし、市民団体アメリカンリバーズや大西洋サーモン同盟などが集まりケネベック連合を設立、更新の許可をしないことを主張します。

1997年11月25日連邦エネルギー規制委員会は、免許の更新を許可せず、エドワーズダムは、電気事業が生み出す電力が、それによって起こる環境被害を正当化することはできないと判断し、撤去命令を下しました。連邦政府が免許更新を認めなかった初めての事例となります。撤去費用はケネベック川水開発団体などが負担し、公金の支出はありませんでした。

撤去計画

コンサル会社が撤去計画から関係する免許の手続き、撤去プロジェクトの監督を行っています。この撤去の趣旨説明や住民への疑問に答えるために、住民に対しても公聴会が開催されています。そして、1999年4月、現場に重機の設置などが行われ、撤去の準備が始まります。実際の本体撤去は、スズキやカワニシンなどの産卵が終わってからになりました。

撤去の開始当日

Edwards2_dam_1 1999年7月1日、地域住民、漁師、当局職員、政府高官などが集まり、撤去前の祝賀会が、堤防傍にある工場の敷地内で行われます。大型のスクリーンにケネベックの過去と未来への期待が映し出されました。このイベントは、世界中のマスコミの注目を集め、報道されました。教会の神父による祈りのあと、参加者のスピーチが続き、その後、前もってつくられていた締め切り堤がユンボによって壊されると、一気に川は流れだしました。この様子は、堤防からも見ることができ、詳細は大型スクリーンに映し出されました。その後、段階的に撤去作業は進み、11月には終了しています。162年ぶりに、ダム湖であった約17マイル(約27km)に自然な川が戻り、産卵場も再び出現することとなりました。生物学者は数年のうちに、サケやニシン、アレワイフなどの回遊魚の数が増えると見ています。

ダム撤去後のケネベック川

アメリカンリバーズはダム撤去の恩恵を以下のように報告しています。

回遊魚の復活

○アレワイフがダムがあったところより、18マイル上流のウォータービルまで溯上した。生物学者はその数を200万尾と見積もっています。

○釣り人に人気があるシマスズキも、19マイル上流で、67ポンド補獲され、また春にも戻ってきています。

○ウォータービルで初めて補獲されたアメリカンシャッドは、孵化場で増殖され、再度放流されますが、過去の水準に戻るまで、続けられる予定です。

○チョウザメも、元ダムサイトで飛び跳ねているのが報告されています。

野性生物への影響

ハクトウワシ、ミサゴ、アオサギ、カワセミ、ウなどが魚を獲るところが川沿いからもみることができます。淡水イガイは、アレワイフの鰓に産卵をして、上流に運んでもらうために、アレワイフが傍を通ることを察知すると、すばやく卵を放出します。

水質の劇的な改善

これまでダム湖は最低の水質基準をクリアすることができませんでしたが、劇的な改善により、水質階級もBランクに位置づけられました。撤去以前にはめったに見ることができなかったカゲロウやカワゲラの数も劇的に増加しています。

レクレーション機会の増大

ボート遊びをする人、釣り人、バードウォッチをする人などが川に戻ってきています。また、多くの人が水位低下により、泥だらけの堤防が露わになると、リクレーションの利用を躊躇するのではないかと心配していましたが、草や低木が自然に生え、堤防は緑に覆われつつあります。また、水位低下により急流や小さな砂洲が多く出現しました。162年ぶりに現れた、これらの新たな特色は、ケネベック川に面白く多様な旅行の機会を生み出しています。

地域社会や地域経済への影響

州都オーガスタでは、河川空間改選地区を設定し、その保護と利用計画を立てています。エドワーズ工業跡地は公園にする計画です。カイドサービス業や地元企業も新しくなる川がもたらす効果に期待を寄せています。旅行用品業者の一人は、「ドリフトボートが今後5年間で30槽は見られるようになるだろうと思ったが、今はその倍にはなるとみている」「楽天的な初期の予想をも上回る経済効果があるだろう」と述べています。

(※参照:Edwards Dam Removal Update:Maine State Planning Office)

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2010年3月 5日 (金)

アメリカのダム撤去事例(1)

ダム撤去の成功事例―ブルーバードダム

アメリカのダムの撤去事例は600を超えているといいます。ダム撤去の情報の収集・検証はまだ十分であるとは言えないものの、撤去前と後の写真や簡単な報告はWEB上からも入手することができます。撤去の成功例として紹介されているものについて、折を見て紹介していきたいと思います。

ブルーバードダム撤去に関する関連写真

ブル―バードダムについて

◎所在地:コロラド州オーゼル川

◎建設:1904年

◎高さ:56フィート(約17m)

◎幅:200フィート(約61m)

◎目的:灌漑用水貯水

◎所有者:ロングモント市

◎撤去時期:1989年~1990年(他の2つのダム含む)

◎撤去費用:(水利権購入費)190万ドル、(撤去費用)150万ドル

ダム建設の背景と影響

ロッキー山脈の中にあるこのダムの建設地は、建設後にロッキー山脈国立公園に指定されました。それまでも安全性が指摘され、修復するか撤去するかの議論の対象でしたが、公園内にあるこのダムは景観上からも問題があるとして、国立公園局(NPS)が撤去を検討してきました。その結果、NPSは所有者であるロングモント市から水利権と土地所有権を買い取り撤去事業を進めました。撤去事業は1989年から始まりましたが、他のダムとは違い、森林限界を超える非常に高いところにあり、生態的にも影響を与えやすいことから、それまでの撤去にはない工夫が必要でした。そのために特殊整備を施した掘削機をヘリコプターで運び、コンクリートの塊に裁断して925回もペリコプターで運び出すという作業が強いられました。しかし、同じ水系の支流にあった他の二つのダムを含め、1989年から1990年の間に撤去作業は終了しています。

川の回復について

ブルーバードダムの撤去は、懸念された安全性を軽減させただけでなく、回復した自然河川再生により、絶滅の危惧にあったニジマス―ニジマスはダムサイト下流の支流を産卵場としていましたが、その生息地を回復させることが出来ています。

河川の再生に当たっては、NPSは小川に木陰をつくるために柳を植栽すること以外は、自然の植生が回復するままにして、他の活動はしていません。しかし、ダムがなくなった時に露わになった、1.2ヘクタールほどの泥地は5年、湖畔の37ヘクタールの裸地は7年間で完全に植生が回復しています。また、露出した岩についても、NPSの生物学者は、50年~100年で苔に覆われるだろうと予測しています。

現在、現地を訪れても、そこにダムがあったという形跡は、ダム撤去のプロセスを書いてある掲示板以外になく、すばらしい高山地帯の景観が展望を目にすることができます。NPSは、この遠隔地に年間500人~1000人の訪問者があるとしています。

撤去の意義について

安全性の問題と国立公園内の景観を損ねるということで撤去されましたが、ニジマスの生息地の保護と回復も対象にしたNPSの取り組みは大成功を収めたと評価されています。

今日の天気:

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2008年11月16日 (日)

米、大型ダム撤去の時代へ

アメリカ、4つの大型ダム撤去を決定!

蒲島知事の川辺川ダムの白紙撤回を求める発言に続き、近畿の4府知事が「大戸川ダム不要」と発言、ようやく、日本の河川行政の転機が現実のものとなろうとしています。そして、今日の地元新聞のトップはダム見直しのための検討チームを国交省が作るというニュースでした。時代は本当に変わるかもしれないと、ちょっと興奮気味の午前中でした。

そして、もう一つ海外のニュースも飛び込んできました。アメリカ、オレゴン州で4つの巨大ダムを2020年までに撤去するというものでした。Klamath_dam      

アメリカでは、ダム撤去は当たり前というイメージが強いのですが、実は大型ダムの撤去はまだありません。それを4つも撤去するというのですから、米国民にとっても大ニュースのようでした。クラマス川でもダム建設後サーモンが激減したと、地域住民や自然保護団体の撤去運動が起っていました。しかし、ブッシュ政権下、時代の流れは逆行するように、撤去予定のダムは足踏み状態だったようです。それだけに、今日のこのニュースはオバマ政権誕生の影響だと、好意をもって受け止められたことでしょう。

「米国におけるダムの時代は終わった」と述べたのは、米国内務省開拓局前局長ダニエル・ビアード氏です。、平成6年11月9日に南アフリカ共和国のダーバンで開催された第18回国際大ダム会議においてでした。そして、その言葉は、日本中でダムの運動をしている人たちにとって、新しい時代の到来を思わせるほどの強いインパクトがありました。

その8年後、荒瀬ダムの撤去が決定し、「ダムの時代は日本でも終わったのだ」と実感したものです。私たちは、撤去を決めた熊本県民の一人として、日本初のダム撤去に至る経緯を県内外に伝える責任があると感じ、リバーポリシーネットワークのお世話で、アメリカよりダム撤去問題に詳しいデイビット・ウウェグナー氏(元、開墾局研究者)らを招いて八代市で学習会を行いました。平成16年3月25日のことです。この時、アメリカではすでに600以上のダムが撤去されていたと思いますが、驚いたのは、みんな数メートルの小さなダムで、いきなり荒瀬ダムのような大きなダムを撤去するというニュースに驚いたというのに驚いたものです。荒瀬ダムはアメリカの研究者やダム関係者からも、大変注目されていたようです。熊本県には撤去の工法含め、撤去に至るまでの経過、前後の環境の変化など、全世界に向けて情報発信する必要があると。そして熊本県はその自覚をもって撤去に望んでくれるものと思っていました。みんなが当然と思っていた撤去が凍結されることなど誰も予想しなかったことでしょう。

アメリカが、時代に逆行してダムがまた社会的正義になり、日本もまた、蒲島知事の凍結発言をきっかけに、アメリカに追従する流れが生まれるのではと懸念していただけに、今日のニュースは日本にいても、うれしいものでした。

蒲島知事には、一つの手で未来への扉を開けながら、もう片手で、逆行の扉を開けることはしてほしくないものです。

川のダムナミックが自然の川を作る

デビッド・ウェグナー氏が球磨川に送ったメッセージ

ウェグナー氏が元アメリカ陸軍工兵隊幹部のジェームス・ジョンソン氏と共に、荒瀬ダムを訪れたことがあります。その時のことを毛利甚八氏が2004年ビーパル8月号で紹介しています。「荒瀬ダムを撤去すれば、球磨川は甦るのでしょうか」と。

ウェグナー氏はこう答えています。「川はダイナミックなのものであり、その激しい変化が生態系を造る基礎なんだ。ダムはその荒々しさを壊してしまう。ダムを撤去すると川が元い戻ろうとする凄い力をみることができるだろう。完全に昔の川に戻るわけではないが、ダムがあった時よりも自然に近い川になることは間違いない」

自然が元に戻ろうとする力は本当に強いものだと思います。平成14年撤去の準備のためゲートを3か月全開しました。水位が下がった球磨川は、ヘドロですい臭いがしたものの蛇行し、瀬は音を立てて流れていました。驚いたのは、3ヶ月目ぐらいには、きれいな水質の川にしかいない水生昆虫のカワゲラ(川辺川でしか見られなかった)が生息していたことです。人間が手さえ加えなければ、自然の回復力は相当なものだろうと、実感したものです。

「せめて、ゲートを2年間開放してほしい」というのは、住民だけでなく、川や海に生きる万物の声であることを、受け止めてほしいものです。

今日の天気: → 

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