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2012年8月 1日 (水)

ダム撤去とウナギの増加(荒瀬ダムとアメリカのダム撤去の場合)

2010年4月にゲートが全開されて、球磨川は確実に変化しつつありますが、川以上に変化を見せているのが、干潟です。今回はウナギに関する部分についての報告です。

ゲート全開後のウナギの増加

Photo_22002年の冬季から毎年約2ヶ月ほど土砂除去や護岸修復工事のためにゲートが全開されていましたのが、その数年経過したころから漁業者から、少しアマモ場が増えている感じがするという報告を聞いていました。2010年にゲートが全開されるころにはそれは顕著になり、漁師さんからは今年はアマモ場に休憩しに来るウナギを狙ったタカンポ漁師が数十年ぶりに8人復活したと聞きうれしくなりました。

更に2011年度は更に増え、それまでは毎日30kg程市場に入ってきていたのが、1日150~200kgと実に5~7倍に増えました。私が八代に来て依頼初めて、スーパーの店頭に並んでいるのを見た時は本当に驚きました。

今年は去年ほどではないようですが、それでもウナギ漁は順調なようで、他所が減少している分、市場価格キロ6000~7000円の高値で取引きされているようです。

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↑地元のスーパーに並んだ地元産ウナギ

確実に増えているアマモ場

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↑国交省の調査によっても、2009年と比較して2011年には河口のアマモ場は3倍程度に増えていることが分かります。

アメリカでもダム撤去でウナギが急増

バージニア州のダム撤去で、ウナギが急増したというニュースがありました。それによると撤去2年後から急激に増え始め、その後も順調に増えているとのことです。

以下、そのニュースのウナギに関する部分の要約です。

「ダム撤去でアメリカウナギが上流に戻る」 http://bit.ly/Oj9hLK  

American Eels Return to Mountain Streams After Dam Removal 

 アメリカウナギの生息域は少なくなっているが、バージニアの大型ダムの撤去後その数が増えつつある。

 米国地質調査研究所、米国野生動物庁、および国立公園庁の研究者が発表したばかりの研究報告書によると、ラッパハノック川のエンブレイダム撤去で、アメリカウナギの数が100マイル上流の水源地域で増えている。 

アメリカウナギは、産まれたサルガッソー海から大西洋の沿岸に沿った南アメリカの北部からグリーンランドまでの川にたどり着くまで長距離を移動するがダムはウナギの移動を遅らせたり、阻害したりする。 

この研究以前には、アメリカウナギにダム撤去がどう影響するか殆ど知られていなかった。研究では、2004年の大型ダムの撤去の前と後にシェナンドア国立公園の川の中でウナギの量を調べた。それによると、ダム撤去の2年後にウナギの数が急激に増えており、その後殆ど毎年増加しているのが分かった。

 

シェナンドア国立公園でウナギが戻ってきたということは、他の生息域において減少しているというという事実と著しく対照的だ。 

「私達の研究は、ダム撤去の恩恵が遠く上流にまで及ぶということを示している」「アメリカウナギは数十年も減少していたので、それが故郷の川に沢山戻り始めているは嬉しい」とナサニエル・ヒット博士(USGSの生物学者、及び主執筆者)は話す。 

アメリカウナギは現在米国野生動物庁が絶滅危機種保護法で絶滅の恐れのある種としてが指定しようと考えている。ダムなどの移動を阻害する構造物は、この50年の間に、広い範囲においてウナギ減少の原因と認識されるようになった。 

報告書の著者たちは、ダム撤去は、源流域において観察されるように、メスの成熟を促し、ウナギ保存のために長期的な利益をもたらすだろうと仮定している。

 

米国野生動物庁研究所の生物学者、及び共著者であるシーラ・エイラ‐は「この研究は、ダム撤去のアメリカウナギの数にとって直接の恩恵があることを示すと共に、東海岸の川の再生事業の継続の重要性を示している」と話す。

 

シェナンドア国立公園におけるアメリカウナギの回復はまた公園資源の管理のためにも重要な意味がある。「公園のウナギの数は、回復を示し続けている」「この研究は、公園の生態系は公園の外まで広く繋がり、下流域のの保存が上流に重要な恩恵を与えるという事実を明確に示している」と研究者ジェブ・ウォフォードは話している。 

※エンブレイダムは1910年に建造された、高さ22フィート、幅800フィートの発電ダムで、2004年に撤去されました。 

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羨ましいのは、アメリカでは、ダム撤去による影響について、流域全体を視野にいれるのに対し、日本ではまだダムの上下流の限定された範囲に限られていることです。また、荒瀬ダムのゲート全開でウナギが増えていると漁業者や私達が言っても、日本では「ダム撤去との因果関係は認められない」で片付けられるのに対し、ハッキリとダム撤去との関係を認める結果となっていることです。

ともあれ、9月から始まるダム撤去と撤去後のウナギの生息数や生息域に注目していきたいと思います。

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