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2011年6月

2011年6月20日 (月)

荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会第1回会議開催

5月24日、第1回荒瀬ダムフォローアップ専門委員会が県庁AV会議室で開催されましたので、傍聴してきました。遅ればせながらの報告と感想です。

tulip荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会の目的と問題。

目的は「荒瀬ダムの撤去にあたり、治水面及び環境面のモニタリング調査結果について評価・検証を行いながら、より安全かつ環境に配慮したダム撤去を実施するため、荒瀬ダムフォローアップ専門委員会を設置する」(設置要領より)となっています。

確かに撤去を安全に進めるために、このような委員会は不可欠です。しかし、あくまで撤去だけが目的になっており、その後の球磨川をダム建設前の状態に持っていく、すなはち球磨川の再生をどうするかという視点がないために、地元からすると、その調査の方法・検討過程は満足がいくものとはなっていません。

また、今回の委員の構成は殆どが県内の専門家で構成され、荒瀬ダムの問題を身近なものとして、かつ客観的にみている方たちが多いということで評価はされると思います。しかし、現場を知っているもののは少なく、現場の感覚とかけ離れたところでの説明や質疑になっている部分もあることは否めません。少なくとも現場に詳しい地元委員の参加が必要です。また、少なくとも傍聴者にも意見が言える機会が求められます。

第1回目の今回では、ゲート全開後BOD,底生生物や付着藻類において、かなり環境が改善されたと思われるデータが報告されました。

荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会 第一回配布資料及び議事録

note今回の報告で分かったこと

①BOD、PHはゲート全開後下がっている。

②ダム湖が流水区間にでは底生生物ではトビゲラ目、カゲロウ目が種類、量とも大幅に増えるなど、水質や底質が改善されたことを裏付ける結果となった。

③底生生物の貴重種と位置付けられているウスイロオカチグサ、モノアラガイは撤去による影響があると予測されたたま、移植を試みているが、移植先での確認は全くないか、著しく減少している。移植先に以前から生存していたかの確認がないままの移植は問題である。

このことについては委員会からも、「頼むから、これ以上いじらんでそっとしておいてくれ」と意見があった。

④付着藻類では、硅藻、緑藻が大幅に増加していた。

note今回の報告で疑問に思ったこと

①濁度の調査報告があったが、出水時の濁度のみの調査に終わっている。平常時の濁度について連続した調査が必要である。

②水質定期観測においても、報告は「環境基準を満たしている」「出水に伴い上昇」などの記述が多いが、私たちはダムゲート全開前との比較やゲート全開後の変化を知りたいのである。

③堆積物の粒度分布は、ダムゲート開放後の今後の検討のための基礎データとするとして、60%代表粒径で比較検討しているが、この調査の結果をどう分析するのかとても分かりにくい。→これについては、大本委員からも「このデータだけからだったら、物理的考察が全くできない」という意見があっています。これも、住民が何を知りたがっているか、そしてそのためにはどのような調査が必要になるのかという事前の検討が不十分なため起こるものです。

④植物の調査は、メハジキ、カワジシャ、ミゾコウジュなど、「重要な種」についてのみの調査に終わっている。これは委員からも、「生物相とその生育環境の調査が必要」と指摘されている。

このメハジキ、ミゾコウジュの確認地点は、ダムの下流であり、建設前とはその景観は大きく異なっている。地元からすると、ダム建設前の植物の繁殖状況について、聞き取りやデータの収集を行う必要がある。

noteその他、委員からでた意見

このメハジキ、ミゾコウジュの確認地点は、ダムの下流であり、建設前とはその景観は大きく異なっている。地元からすると

●佐藤:球磨川にはクマガワリンドウだとか、クマガワナンテンハギとか幾つか固有の植物があり、こういう重要な植物などは、ここではなくなる、もうないという状況になりかねない。そういうことも含めて、今後は十分配慮していあtだきたい。

●西野:元々そこにこの種がいたのかいなかったのかという調査をしないで、移植されてしまっているのか問題。

●大本:礫上で、微細土砂がどういうふうな堆積状況にあったかということについて、データが取られていない。

●大本:付着藻類でクロロフィルあの量がでていない(→調査してなかった)。

●大本:(「BODについては、球磨川全体で良かったので、ゲート全開でこうなったということは言えない」という事務局の説明に対し)同一の条件下でどういうふうな変化があったか見ることができるようにしてほしい。

●河床材料を取るところと、生物相を取るところが必ずしも一致していない。物理環境と生物環境の調査場所が少し違う。

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この委員会は2時間しかありませんが、その半分が事務局による資料の説明です。事前に資料は渡して、個々の委員で十分検討してもらって、当日は議論してもらうということにすると、十分な質疑ができるのではないかと感じました。

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2011年6月 4日 (土)

流域県学会、研究発表会、6月11日開催

不知火海や球磨川流域圏を様々な視点から捉えようと平成18年に設立された不知火海・球磨川流域圏学会も6年が経過しました。毎年流域各地で開催している研究発表会は今年は八代市で行うことになりました。

その地域の話題をテーマにした基調講演や研究発表が多くなりました。今年は八代の干拓の歴史や荒瀬ダム・不知火海をテーマにした発表、また、写真家麦島勝さんの写真の特別展示などが予定されています。

◆研究発表会のご案内チラシ参照)

日時:平成23年6月11日(土)

    写真特別展示及びポスター発表 午後12時30分から

    基調講演及び研究発表       午後2時から

会場:やつしろハーモニーホール 大会議室AB

参加費(資料代):一般1,000円、会員500円       

Photo※この研究発表会は八代市及び八代市教育委員会の後援をいただいています。

◆特別展示「写真でつづる昭和の八代ー麦島優写真展」午後12時30分開場

展示作品:「鮎干し」「ハゼの実採り」「荒瀬ダム見物」「球磨川の砂利すくい」「筏流し」「寒海苔つみ」「など。

◆基調講演「八代の干拓の歴史」

   講師:戸田市治氏(八代市文化財保護委員長)

八代平野の70%は、1600年代から始まった干拓による造地です。現在の埋立工事とは違って、干拓事業は苦難の連続でした。八代に住む者にとって、干拓の歴史は八代の歴史そのものですが、その歴史についてはあまり知られていません。楽しみな講演です。

◆研究発表

1)「河川環境がヌマエビ類に及ぼす影響」田畑清霧(東稜高校教諭)

2)「荒瀬ダムに関する資料分析」 溝口隼平(東京大学愛知演習林農学共同研究員)

3)「球磨川河口干潟の底生生物の特性」 つる詳子(自然観察指導員熊本県連絡会副会長)

4)「宮崎の海岸林と砂丘と砂浜」 林裕美子(ひむかの砂浜復元ネットワーク代表)

5)「アマモ苗の移植機の開発について」 大和田紘一(東京大学名誉教授)

6){写真でつづる昭和の八代ー麦島勝写真集よりー」石原浩(八代市博物館学芸員)

◆ポスター発表

■写真展示「球磨川今昔」■八代海におけるChattonella antiqua赤潮発生とそれに関係する環境条件■八代海におけるピコ植物プランクトンの植物プランクトン群集への寄与■Capitella sp.Iと微生物による魚類養殖場の有機汚泥浄化作用の解明■干潟の微生物群集と有機態リン分解酵素活性の関係解析■干潟の微生物群集と有機態リン分解酵素活性の関係解析■その他

※不知火海・球磨川流域圏学会に関する詳細はこちら

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2011年6月 3日 (金)

エルワダム発電停止・・・エルワ川再生へ向けて

20040601 6月1日、アメリカのエルワ川に建設されたエルワダムの発電機が止められました。これまで約700基のダムが撤去されたアメリカですが、エルワダムとグラインズキャニオンダムの撤去は最も大きなダム撤去になります。

heartエルワ川と二つのダム

Photo_3 ←川と二つのダムの位置をしました図です(ネットから拝借)

これら二つのダムがあるエルワ川はオリンプック国立公園の中にあり、球磨川より長さは短いのですが、約32mのエルワダム(1913年)が河口から5マイルのところに、またそこから8マイルのところに高さ約64mのグラインズキャニオンダムが建設されてから、荒瀬ダムと同様に洪水や河口の海岸線後退、太平洋性マスの生息域減少などの影響を与えてきました。

しかし、この二つのダム撤去が荒瀬ダム撤去と大きく違うのは、荒瀬ダムは撤去することそのものが目的になっていますが、この二つのダム撤去は「エルワ川再生のために」ということを目的としたダム撤去であるということです。再生プロジェウト予算はなんと二つのダムの撤去の約5倍の324万ドルと言われています。

エルワダムが出来たために、5種類の太平洋性マスと降下性のサケは大打撃を受け、39万尾いたといわれるこれらの魚類数は、2005年には3000にまで減少しています。球磨川のアユの放流量が毎年300万匹が目標ですが、アユとマスではわけが違います。1匹のスチールヘッド(マス)は、時には100ポンドにも成長し、その経済効果は1匹で8000円から3万円にもなるという試算もあります。

何よりダム撤去を切望したのは、古来よりこれらのマスの恩恵に預かって生活を営んできたElwha Klallam族です。そして、今この撤去及び再生計画はElwha Klallam族やオリンピック公園、行政などが一緒になって立案、実行されています。撤去方法や工期について、地元の意見が全く考案されることがない荒瀬ダムとなんという違いでしょう。

Photo_2 (↑エルワダム)

heart撤去方法

撤去の手順がネットにアップされていますこれによると左岸のクレストから撤去が開始され、その次に右岸クレスト、それから中央に設置されている水圧菅と撤去されていく予定になっています。今年の秋から工事が始まり約3年で終了予定です。

  ◆エルワダムの撤去手順  撤去手順PDFファイル

 ◆エルワダム 撤去シミュレーション

 ◆グラインズキャニオンダム撤去シミュレーション

heartエルワ川の再生計画

エルワ川の詳しい再生計画はまだ把握できていませんが、マスやサケの再生はただ単にダム撤去だけに任せるのではなく、人口孵化場がすでに建設され積極的な計画が立てられています。また、800エーカーにも及ぶ裸地の復元のために、地元の植物の種採取が、植物研究家やボタンティアによって2002年から行われ、9月の撤去開始と共に、浸食防止や外来種の浸入を防ぐために1万5000株が植栽される予定です。最終的に40万株の植栽を計画されています。

撤去により鮭や鱒がどのように戻るのか、また、それらか熊やイヌワシにどのような影響をあたえるのか、更にはダム湖の堆積物の放流が河口にどのような影響を与えるのか、エルワ川再生計画における試みが他のダム撤去に大いに役立つだろうと研究者は注目しています。.

heartこの秋から工事がスタート

6月1日の発電停止のニュースは全米の新聞が大きく取り上げてありました。ダムがあるオリンピック公園当局は、9月17日に盛大な祝賀会を計画しています。国内で人気があるミュージッシャンや政治家など大物を招待されるといわれています。

荒瀬ダムは日本で初めてのの、それも大型のダム撤去です。ダム撤去が球磨川にどのような影響があるのかは、全国のダムの現場でも関心が持たれているものと思いますが、行政や事業者の取り組みには雲泥の差があるようです。

荒瀬ダム撤去まで、残すところ1年。国が30億を急きょ支出することになり撤去が前倒しされたエルワダム撤去は先行して、今年の9月から始まります。今後ともこのダム撤去及びその再生計画に注目していきたいと思います。

※下記動画は、エルワダムの建設経緯だけでなく、昔のElwha Klallam族の生活やポートアンジェラスの開拓の経緯、エルワダム建設当時の様子から、エルワ川に生息するマスや自然の紹介など、貴重な写真を利用した動画です。私たちが見てもとても参考になると共に、懐かしさをも感じさせるものとなっています。是非、見て下さい →The Elwha dam

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