球磨川河口干潟をラムサール条約登録地に
球磨川河口の干潟について
球磨川の河口には、約1000haの干潟が広がっています。干潟ではアサリやハマグリ漁が行われていますが、渡り鳥の休憩・餌採場所としてシギ・チドリネットワークに参加承認されています。渡り鳥が利用できるというは、いうまでもなく餌となるカニやゴカイ等が豊富に生息しているからに他ありません。
今年の8月に開催されたラムサール登録候補地検討委員会において、全国172か所の湿地が潜在候補地となっています。球磨川河口も基準2(国際的に絶滅のおそれのある種又は消失の危機に瀕している生物群集を支える上で重要だと考えられる湿地)において、クロツラヘラサギとズグロカモメが該当しているとして潜在候補地となっていましたが、最終的には鳥の基準1%を決められた年数確認がされていないとして、候補地から現在外れてしまいました。
しかし、河口干潟をここ数年調査している和田太一氏(NPO法人南種港ウェットランドグリープ理事)により、現在球磨川河口には290種の底生生物生物が確認され、そのうちの約36%104種が絶滅危惧種としてレッドリスト等に記載されていることが分かりました。
八代市民にもあまり知られていない、球磨川河口の貴重な自然。情報発信の必要性を強く感じています。
球磨川河口の干潟
球磨川河口の干潟です。球磨川は八代市において、球磨川本流と前川に分流し、球磨川本流はさらに南川と球磨川に分かれていますが、それぞれの河口に干潟が形成されています。大潮時には干満差3~4m、最大3~4km沖にまで広大な干潟が広がります。
多種な湿地のタイプがある河口干潟
干潟には河口干潟や前浜干潟、またヨシ原がある塩性湿地、汽水域と様々なタイプの湿地がありますが、これらがすべて揃っているのが球磨川河口干潟です。そのことが、290種という多種多様な生物種の生息を可能にしているのです。
確認された球磨川河口干潟の生物種
多くの生物がこれまで確認されています。そのうち巻貝は55%、二枚貝50%、カニは20%が絶滅危惧種と、多くの生き物が絶滅の危機に瀕しています。
満たしている登録の基準
ラムサール条約に登録されるためには、国際的に重要な湿地であると指定されるための9つの基準のどれかを満たしている必要があります。球磨川河口は、クロツラヘラサギとスグロカモメがこのうちの基準2((国際的に絶滅のおそれのある種又は消失の危機に瀕している生物群集を支える上で重要だと考えられる湿地)に当てはまるとされましたが、全世界の生息数の1%が飛来が、5年のうち3年以上という基準をまだ満たしていません。
しかし、底生生物においては、十分にこの9つの基準のうちの3つをクリアしていると和田氏は指摘されています。
ベントスにおいてクリアの可能性がある3つの基準
基準1:各生物地理区内で代表的、希少又は固有な湿地タイプ(干潟の規模・自然度の高い汽水域など)
基準3:ア各生物地理区の生物多様性を維持するのに重要と考えられる湿地(種の多様性や希少種の生息)
基準8:魚介類(甲殻類、軟体類を含む)の重要なえさ場であり、産卵場、稚魚の生息地など)
これらの基準について、現在172ある候補地の中の他の候補地と比べてどうなのかが問われていくものと思われますが、国際基準を満たしておれば、必ず登録されるというものではありません。
登録の条件
登録には国際基準を満たしていることの他に、自然保護法とか鳥獣保護法などにより保護区に指定され、将来にわたって自然環境の補選が約束されているかどうかという2つ目の条件があります。球磨川河口干潟が登録されるためには、まずこの保護区に指定されることが必要です。まず、この保護区の指定のための行動が必要です。
3つ目の条件としては、地元自治体の登録への賛意が必要ですが、これに関しては、八代市長が先の9月議会において、「登録に向けて積極的に行動する」旨の答弁をしています。八代市を後押しできる世論形成が市民には求められていくことになります。
また、ラムサール条約地は全国で37か所ですが、現在九州には2か所しかなく、熊本県内には一か所もありません。現在県内7か所が潜在候補地になっています。熊本県もラムサール登録に向けた積極的な取り組みをしてほしいものです。
登録のメリット
ラムサール登録の地元へのメリットとしては、以下のようなことが考えられます。
全国初のダム撤去となる荒瀬ダム撤去と合わせ、ラムサール登録を目指すことで、八代市の知名度がアップすることは間違いありません。また、荒瀬ダム撤去により、更に干潟の環境が改善され、絶滅の危機とされている多くの生き物の生息数が改善されれば、更にラムサールの登録の可能性は高まりますが、仮に登録されなくても、豊かな干潟が将来にわたって保全されることに繋がるものと思われます。
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