荒瀬ダムゲート全開後の八代海のうれしい変化
ゲート全開だけで、変わりつつある八代海
平成14年に撤去が決定し、その準備のため平成15年から冬期2ヶ月間だげゲートが全開されるようになりました。また、今年の3月で水利権が切れたため4月からはずっとゲートが全開されています。なので、4月からのゲート全開でいきなり球磨川河口の干潟が変わったというわけではありませんが、干潟は確実に変化しつつあります。
この数年で変わってきた球磨川河口や八代海の変化をまとめてみました。
行く度に確実に歩きやすくなり、歩ける範囲が広がってきた。
以前は、護岸に一番近いところがヌカっていて、干潟に入るのが困難でした。入れたにしても歩くのも困難で一歩一歩確認しながら歩いていました。膝までいきなり入ってしまうということは普通でした。ここ数年のゲート全開で干潟に入れるようにはなっていましたが、まだ動ける範囲は限られていました。4月以降は行くたびに歩きやすくなっています。砂が増えているのが実感できます。
ある程度の砂がないと生息できない生き物が増えてきた。
干潟はいろんな生き物が住み分けをして生息していますが、これまでの球磨川河口は泥干潟が殆どだったので、多様性に乏しい干潟となっていました。しかし、今はある程度の砂がないと生息できない絶滅危惧種ハマグリやオサガニが大変増えています。
少なくなっていたマテガイやタイラギも増えてきた。
絶滅まではしてないものの、激減していたマテガイやタイラギは大変数が増えてきました。マテガイが店頭に並ぶのは、見た事ありませんでしたが、去年ぐらいから店頭にも並んでいます。
河口干潟では絶滅したと思われていた種が確認されるようになった。
「昔一番沢山いたもので、全く見なくなったものは」と地元の人に聞くと、全員が口をそろえていうのがウノカイ(オオノガイ)です。一昨年ぐらいからチラホラですが確認されるようになりました。また、今年は行くたびに、何十年も確認がなかったミドリシャミセンガイも確認されるようになりました。
大水後の濁りが早く取れるようになった。
以前は大雨が降って荒瀬ダムから放流された濁水が元に戻るのに何日もかかっていましたが、今は数日で元に戻ります。また、荒瀬ダムから放流された濁水は対岸の天草まで広がって届いていましたが、今年は、その濁水が天草まで来たことがないと対岸の漁師さんは言っていました。
赤潮や青潮、白潮が起こらなくなった。
数年前までは、夏場に荒瀬ダムが放流して濁水が八代海を覆うとそこから赤潮が発生して広がっていました。ここ数年球磨川の淡水の影響を受ける範囲での赤潮は発生しなくなりました。また、夏場、富栄養化した水が流れることで河口にアオコガ発生することがしばしばありました(青潮)。しかし、ここ数年だんだん無くなり、今では全く見なくなりました。
また、夏場など局所的に海の底が見えるぐらい透明になるが、定置網で捕獲した魚などみんな死んでしまうという現象(漁師さんは白潮と呼んでいた)が度々起こるようになっていましたが、これも全く見なくなりました。
アオノリの品質がとても良くなった。
河口では海の漁師さんがアオノリの養殖を、河口近くの球磨川では内水面漁協の漁師さんがアオノリ採取をしています。ゲートが開放されるようになって、養殖のアオノリが色落ちすることがなくなりました。また、長さも大変長く成長するようになり、苦味のない香りが高いアオノリが採取できるようになっています。ただ、アオノリは水温に左右されるため、年によって漁獲量が大変左右されますので、量的な比較はできません。
アマモ場が増えつつあり、ウナギが増えた。
昔の球磨川河口の干潟はどこまでも歩いていける砂干潟の先はアマモ場がありましたが、ダム建設後すっかりなくなり何箇所かにスポット的に生育している程度になっていました。しかし、ここ数年で増え始め面的な広がりを見せています。
それに従って、ウナギがアマモ根っこに休憩しに戻ってくるようになりました。今年はタカンポ(ウナギを捕る漁具)漁をする漁師さんも7~8人出てきました。天然のウナギはキロ6000円という高値で取引きされるそうです。来年はもっと増えるだろうと楽しみにされています。
チリメンジャコが早くから採れるようになった。
八代海のチリメンジャコは昔は10月ぐらいから捕れていたのが、ダムが出来てから、チリメンジャコが捕れる時期がだんだん晩くなり11月中ごろからしか採れなくなっていました。しかし、今年は10月の始めから捕れているそうです。「ここ数年のゲート全開は12月ごろだったので、影響が分からなかったが、今年は4月から全開されているので、ゲート全開の効果が出たのだと思う」とチリメンジャコの漁師さんは言っています。
ゲート全開の経済的効果は確かに出ている
まだ、八代海の漁獲量というデータとして、経済効果を示すものはありません。チリメンジャコの漁期が長くなった。アオノリの質が良くなった。ウナギ漁が出来るようになった。干潟でアナジャコやマテガイ、ハマグリを採捕し市場に出す人が出てきた・・など、ゲート全開は確実に八代海を再生しつつあり、経済効果も徐々に出てきていることを示しています。
熊本県がダム撤去の影響は海まで及ばないと結論付けて、干潟や八代海の調査をしようとしないのはとても解せないものです。今までのダム建設で影響=悪影響という概念があるのかもしれませんが、日本初のダム撤去の現場としてきちんと調査をして全国に情報発信してほしいものです。
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