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2010年4月 3日 (土)

アメリカの撤去事例(2)-エドワーズダム

荒瀬ダムの撤去が決定し、蒲島知事は、撤去工法を決定するために「技術研究委員会」を設置、7月までに安全・環境の面から撤去計画を策定すると発表しています。しかし、荒瀬ダムは近年では国内初のダム撤去となり(昭和30年代に宮崎の轟ダム撤去が実際の全国初ダム撤去)、撤去の参考とする事例がありません。一方、アメリカには多くの撤去事例があります。アメリカにおいて蓄積されたデータ・報告なども参照して、住民参加の手法等含め、学ぶべきところは学んでほしいと思います。

撤去事例(2)エドワーズダム

エドワーズダムは、アメリカメイン州オーガスタのケネベック川に1837年に建設された高さ7.3mの発電ダムです。老朽化の問題もありますが、連邦政府が、発電による収益よりもダム撤去による健全な川が環境にもたらす恩恵の方が大きいと判断して、撤去命令を出した最初のダムとして注目されました。1999年に撤去されています。Edwards_dam

高さは、荒瀬ダムよりかなり低いのですが、それでも撤去による回遊魚の再生や地域の経済効果など、撤去は地域社会や河川環境に大きな変化を与えています。

fishエドワーズダムとは

エドワーズ織物工業に電力を供給するために、1837年に建設されます。1980年にエドワーズ工業は工場を閉鎖しますが、電力会社との契約によって、発電事業は継続されてきました。1990年代初め、水利権の許可期限が切れ、1年ごとの更新で許可は継続されてきました。しかし、市民団体アメリカンリバーズや大西洋サーモン同盟などが集まりケネベック連合を設立、更新の許可をしないことを主張します。

1997年11月25日連邦エネルギー規制委員会は、免許の更新を許可せず、エドワーズダムは、電気事業が生み出す電力が、それによって起こる環境被害を正当化することはできないと判断し、撤去命令を下しました。連邦政府が免許更新を認めなかった初めての事例となります。撤去費用はケネベック川水開発団体などが負担し、公金の支出はありませんでした。

penguin撤去計画

コンサル会社が撤去計画から関係する免許の手続き、撤去プロジェクトの監督を行っています。この撤去の趣旨説明や住民への疑問に答えるために、住民に対しても公聴会が開催されています。そして、1999年4月、現場に重機の設置などが行われ、撤去の準備が始まります。実際の本体撤去は、スズキやカワニシンなどの産卵が終わってからになりました。

fish撤去の開始当日

Edwards2_dam_1 1999年7月1日、地域住民、漁師、当局職員、政府高官などが集まり、撤去前の祝賀会が、堤防傍にある工場の敷地内で行われます。大型のスクリーンにケネベックの過去と未来への期待が映し出されました。このイベントは、世界中のマスコミの注目を集め、報道されました。教会の神父による祈りのあと、参加者のスピーチが続き、その後、前もってつくられていた締め切り堤がユンボによって壊されると、一気に川は流れだしました。この様子は、堤防からも見ることができ、詳細は大型スクリーンに映し出されました。その後、段階的に撤去作業は進み、11月には終了しています。162年ぶりに、ダム湖であった約17マイル(約27km)に自然な川が戻り、産卵場も再び出現することとなりました。生物学者は数年のうちに、サケやニシン、アレワイフなどの回遊魚の数が増えると見ています。

fishダム撤去後のケネベック川

アメリカンリバーズはダム撤去の恩恵を以下のように報告しています。

one回遊魚の復活

○アレワイフがダムがあったところより、18マイル上流のウォータービルまで溯上した。生物学者はその数を200万尾と見積もっています。

○釣り人に人気があるシマスズキも、19マイル上流で、67ポンド補獲され、また春にも戻ってきています。

○ウォータービルで初めて補獲されたアメリカンシャッドは、孵化場で増殖され、再度放流されますが、過去の水準に戻るまで、続けられる予定です。

○チョウザメも、元ダムサイトで飛び跳ねているのが報告されています。

two野性生物への影響

ハクトウワシ、ミサゴ、アオサギ、カワセミ、ウなどが魚を獲るところが川沿いからもみることができます。淡水イガイは、アレワイフの鰓に産卵をして、上流に運んでもらうために、アレワイフが傍を通ることを察知すると、すばやく卵を放出します。

three水質の劇的な改善

これまでダム湖は最低の水質基準をクリアすることができませんでしたが、劇的な改善により、水質階級もBランクに位置づけられました。撤去以前にはめったに見ることができなかったカゲロウやカワゲラの数も劇的に増加しています。

fourレクレーション機会の増大

ボート遊びをする人、釣り人、バードウォッチをする人などが川に戻ってきています。また、多くの人が水位低下により、泥だらけの堤防が露わになると、リクレーションの利用を躊躇するのではないかと心配していましたが、草や低木が自然に生え、堤防は緑に覆われつつあります。また、水位低下により急流や小さな砂洲が多く出現しました。162年ぶりに現れた、これらの新たな特色は、ケネベック川に面白く多様な旅行の機会を生み出しています。

five地域社会や地域経済への影響

州都オーガスタでは、河川空間改選地区を設定し、その保護と利用計画を立てています。エドワーズ工業跡地は公園にする計画です。カイドサービス業や地元企業も新しくなる川がもたらす効果に期待を寄せています。旅行用品業者の一人は、「ドリフトボートが今後5年間で30槽は見られるようになるだろうと思ったが、今はその倍にはなるとみている」「楽天的な初期の予想をも上回る経済効果があるだろう」と述べています。

(※参照:Edwards Dam Removal Update:Maine State Planning Office)

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