アメリカのダム撤去とその恩恵
アメリカにおいて、これまで建設された高さ6m以上のダムの数は、75000基と報告されていますが、6m以下のものを入れたダムの総数は、実に250万にも及ぶと言われています。これは、独立宣言以来、毎日1日に1個づつのダムが建設された計算だということです。開拓時代に、未開拓地に入植したパイオニアが、個人的な利用のために川をせき止める構造物を造ったことが始まりのようです。
アメリカでは、すでに700を超えるダムが撤去されています。日本では、アメリカの撤去されたダムはほとんどは小さいという報告がよくされますが、高さ12以上のダムでも40以上のダムが撤去されておりその中で、36m以上のダムも4つあります。そんなアメリカのダム撤去の実情をちょっと紹介です。
撤去されたダム様々(1999年、アマリカンリバーズの報告書参照)
○最も古いダム撤去は、記録にあるものは、1912年のデッドリバーのマーケットダム撤去です。数の上では、1980年代(92基)、1980年代(177基)に多くのダムが撤去されています。
○撤去されたダムの種類も、木枠組みや石積みの簡単なものから、ロックフィルダム、重力式コンクリートダム、コンクリートアーチ式ダムまで、様々です。
○ダムの当初の目的も、治水、利水、発電、リクレーションなど、多岐に亘っています。
○撤去されたダムが多い州は、ウィスコンシン州(73基)、カルフォルニア州(47基)、オハイオ州(39基準)、ペンシルバニア州(38基)、テネシー州(25基)などです。
○一番高さが高いものは、48.8mで、一番低いものは60cmです。また、堤長は平均51m。一番長いものは323mで、短いものは3mです。
ダムの撤去費用
撤去費用は、1999年の報告書では、一番安いものは、たったの1500ドル(約15万円:現在の為替レート)で、高いものはサンタフェ川のトゥーマイルダム(高さ25.5m、長さ216m)の320万ドル(約3億円:1994年撤去)やケネベック川のエドワーズダムの210万ドル(約2億円:1999年撤去)と報告されています。
これからすると、荒瀬ダムの撤去費用は、撤去方法に違いがあるとしても、けた外れに高額に思えます。
アメリカで、間もなく撤去されると予定の、マチリヤ川マチリヤダム(高さ57m、幅186m)の撤去費用は、その撤去方法により、約22億円から196億円の開きがあるといいます。その差は、ダム湖の堆積土砂の除去方法の違いに大きく左右されるようです。すなはち、自然流化させる場合が一番安く、パイプラインで、海まで堆積物を運ぶ場合はコストが高くなるといいます。
荒瀬ダムの撤去費用91億円のうち、これまでに20億円が支出されていますが、そのうちの半分10億円は土砂の除去費用です。地元の方たちは、自然流下で構わないレベルと言います。本当に必要なコストかどうかは、再考する必要がありそうです。
ダム撤去がもたらした恩恵
多くの事例報告から、ダム撤去がもたらした恩恵は、以下のようにまとめられています。
①生き物の生息環境の復元
②水質の改善(著しい)
③回遊魚の往来の実現
④絶滅が危惧された魚種の増加
⑤ダムの維持管理や関連コストの削減
⑥税金の節約
⑦川の景観改善
⑧釣りの機会増大
⑨住民の川へのアクセス性の改善
⑩公園などの新しい利用のための土地出現
⑪水辺のリクレーションの機会増大
⑫観光事業の増大
・・・・総合すると川の再生と、それによる地域の活性化が撤去のメリットということのようで、すべて荒瀬ダムにも当てはまるようで、撤去後が本当に楽しみです。
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