アメリカのダム撤去事例(1)
ダム撤去の成功事例―ブルーバードダム
アメリカのダムの撤去事例は600を超えているといいます。ダム撤去の情報の収集・検証はまだ十分であるとは言えないものの、撤去前と後の写真や簡単な報告はWEB上からも入手することができます。撤去の成功例として紹介されているものについて、折を見て紹介していきたいと思います。
ブル―バードダムについて
◎所在地:コロラド州オーゼル川
◎建設:1904年
◎高さ:56フィート(約17m)
◎幅:200フィート(約61m)
◎目的:灌漑用水貯水
◎所有者:ロングモント市
◎撤去時期:1989年~1990年(他の2つのダム含む)
◎撤去費用:(水利権購入費)190万ドル、(撤去費用)150万ドル
ダム建設の背景と影響
ロッキー山脈の中にあるこのダムの建設地は、建設後にロッキー山脈国立公園に指定されました。それまでも安全性が指摘され、修復するか撤去するかの議論の対象でしたが、公園内にあるこのダムは景観上からも問題があるとして、国立公園局(NPS)が撤去を検討してきました。その結果、NPSは所有者であるロングモント市から水利権と土地所有権を買い取り撤去事業を進めました。撤去事業は1989年から始まりましたが、他のダムとは違い、森林限界を超える非常に高いところにあり、生態的にも影響を与えやすいことから、それまでの撤去にはない工夫が必要でした。そのために特殊整備を施した掘削機をヘリコプターで運び、コンクリートの塊に裁断して925回もペリコプターで運び出すという作業が強いられました。しかし、同じ水系の支流にあった他の二つのダムを含め、1989年から1990年の間に撤去作業は終了しています。
川の回復について
ブルーバードダムの撤去は、懸念された安全性を軽減させただけでなく、回復した自然河川再生により、絶滅の危惧にあったニジマス―ニジマスはダムサイト下流の支流を産卵場としていましたが、その生息地を回復させることが出来ています。
河川の再生に当たっては、NPSは小川に木陰をつくるために柳を植栽すること以外は、自然の植生が回復するままにして、他の活動はしていません。しかし、ダムがなくなった時に露わになった、1.2ヘクタールほどの泥地は5年、湖畔の37ヘクタールの裸地は7年間で完全に植生が回復しています。また、露出した岩についても、NPSの生物学者は、50年~100年で苔に覆われるだろうと予測しています。
現在、現地を訪れても、そこにダムがあったという形跡は、ダム撤去のプロセスを書いてある掲示板以外になく、すばらしい高山地帯の景観が展望を目にすることができます。NPSは、この遠隔地に年間500人~1000人の訪問者があるとしています。
撤去の意義について
安全性の問題と国立公園内の景観を損ねるということで撤去されましたが、ニジマスの生息地の保護と回復も対象にしたNPSの取り組みは大成功を収めたと評価されています。
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