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2010年2月 6日 (土)

八代の農家が荒瀬ダム撤去にもつ不安

libra撤去のため4つの条件整備の一つ「農業用水の確保」

蒲島知事は今月3日に荒瀬ダム撤去を表明した際に、ダム本体撤去着手までに取り組むべき4つの条件を挙げています。そのうちの3つ目の条件は、「代替橋や農業用水の確保など地域の要望については、八代市や、地元に対しても主体的に解決を図るよう求める」というものです。この代替橋の話は後回しにして、この農業用水について、分かっている事実だけをお伝えしておきます。

農家が荒瀬ダム撤去に不安を抱くのは、平成6年の大渇水の時に荒瀬ダムが水がめとしての機能を果たしたという話が、広く伝わっているからです。確かにこの年は、熊本県内も各地で水不足が生じ、赤くなったスギ林が目立ったことは、農家でない私たちにも記憶に新しいところです。

libra平成9年の渇水被害の状況

この時の大渇水の様子は、「熊本県『平成六年 大渇水の記録』」に詳細にまとめてあります。八代地方に関する部分には、「八代地区の被害は、3.9億円。被害面積は476ha」とあります。県内42町村に渇水対策本部が設置されていますが、八代地区においては、9月1日に鏡町(現在は八代市)に設置されたのみで、旧八代市では設置されていません。同記録には、「球磨川の下流の遥拝堰堰でもかんがい期間を通して流量は足りており、取水制限する必要はなかった」との記録があります。

libra平成6年の大渇水の記録と荒瀬ダムとの関係

平成6年時は大渇水により、ダム湖への流入量が低下し、確かに発電が何度かストップしています。この発電停止の対策としては、「藤本発電所における責任放流以外の貯水など水の効率的運用を行い、発電電力の増加に努めた(同記録)」ようです。つまり、責任放流量以外は発電のためにせっせと貯めるよう努力をしたというのです。発電事業ですから当然な対応かもしれませんが、渇水の時ですから、下流から貯めないで下に流してくれという要望がくるのは当然のことです。

つまり、この時は、ダム湖の水位が下がって発電ができなくなったが、できるだけ発電を再開しようと水を貯めようとしたが、下流から「水を貯めるのを待って、そのまま下流に流してくれと」お願いがきて、それに発電所が答えたということです。つまり、ダムがなかったら、当然上流からくる水が、ダムによって取られることなく、下流まで届いたということです。

このことについては、私はU局長からも直接、「みんな渇水の時水がめになったと言うが、勘違いしてる。こういうことだった」と上記の説明をしてくれました。このころ(撤去決定後)のU局長は、県議会の一般質問においても、「荒瀬ダムは利水の効果はありません」ときっぱり答えてくれていました。

libra平成6年の渇水時は遥拝堰の工業用水を転用して対応した。

また、平成15年に八代の土地改良区から、荒瀬ダム撤去後の安定流量確保のために、早期の川辺川ダム着工を求めた陳情書が出された折に、H元県議の荒瀬ダムの利水目的に聞いて質問をしていますが、担当者は「過去を振り返ってみると、平成6年に1度だけ、遥拝堰で水不足が生じた。その時は、渇水協議会を開いて、農業用水優先という取り決めで、工業用水を調整して問題解決した」と説明していることからも、遥拝堰席の管理体制の範囲内の協議で終わっていることが分かります。遥拝堰の工業用水は余っているのですから、当然の対応です。

libra撤去後の瀬戸石ダムの運用変更については、協議済み

平成17年11月の議会における一般質問で、瀬戸石ダムの運用について問われた担当者は、「遙拝堰等における農業用水等の安定確保についてでございますが、荒瀬ダムは、上流に位置する瀬戸石ダムの放流水を受けとめ、下流への水量変動を調整して放流するもので、1日当たり流入した水量とほぼ同量の水を利用して発電を行う発電専用ダムであり、農業用の利水機能は有しておりません。
 しかし、荒瀬ダムの運用停止後、瀬戸石ダムが現在採用しているピーク発電方式を継続するならば、下流の遙拝堰等からの取水に影響を与える可能性は否定できないと考えます。
 このため、ダムの運用や発電方式の見直しを初め、今後の対応について、電源開発株式会社と具体的な意見交換や協議を重ねております。」と答えています。このことから分かるように、瀬戸石ダムは現在の運用では、安定した水量を下流に流していないことがわかります。撤去後、安定した水量保持のためには、瀬戸石ダムの運用変更は欠かせません。しかし、この問題に関する協議は、こののち運用変更することで合意を得たという報告があったと記憶しています。

libra利水機能もなく、マイナス面ばかりだった荒瀬ダム

結論として、荒瀬ダムが渇水の時の水がめになるというのは、事実的根拠はなく、荒瀬ダムにお願いしたという事実に、農家の皆さんに残る平成6年の大渇水の記憶などが合わさって、荒瀬ダムは水がめという話として広まったもののようです。確かに水量は少なくなって、下流の八の字堰からの取水は困難だったようです。しかし、その時に荒瀬ダムが発電のために水を貯水し始めていたら、もっと大変になっていたでしょう。荒瀬ダムがあって渇水に悩まされなかったという話ではなく渇水はあったのに、また、荒瀬ダムが水の独り占めをやめて、上流からの水をそのまま流したのに、「荒瀬ダムのおかげで助かった」というのは、大渇水の時、何にでも頼りたいという農家の気持ちが根底にあるからです。また、それをうまく利用している人たちがいるのかも知れません。

また、農家にとって確かに水が命であることは否定できません。しかし、もし荒瀬ダムが利水機能を持ったダムだとしても、また、日ごろから水不足に苦しんでいるというわけでもなく平成6年のような何十年に一度の大渇水のために、その何十年を漁業者が漁獲量減少に耐え忍んだり、ダム湖周辺に住む住民が水害被害や振動被害に耐えるべきというのでは、農家の主張もエゴだとも受け取られかねません。

前後の電力不足の時には確かに県民に恩恵をもたらした水力発電ダム。しかし、その間の54年、どれほどの犠牲を地元や漁業者に敷いてきたか、県民に考えてほしいと思うのは、決して地元のエゴではないと思います。

2月3日の蒲島知事発言で、「50年以上も辛抱してきた。球磨川を私たちに返してくれ」という思いがやっと通じたのです。何十年に一度の渇水対策は、また別に考えてほしいものです。

※農家の渇水問題の事実に関するチラシ               荒瀬ダム問題を農家の不安をあおるのに利用しないで

今日の天気:sun

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