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2008年11月17日 (月)

不十分な荒瀬ダム存廃の検証

fish費用対効果の検証がな報告書

荒瀬ダムを撤去する場合と存続する場合について、県庁内にプロジェクトチームが作られ、1ヶ月間の検証ののち、報告書がまとめられ今月11日に公表されました。企業局が試算した撤去費用は91.8億円に膨らんでいました。しかし、その試算の根拠となった元データは全く公表されていません。

また、この報告書は主にコストに関する報告ですが、撤去した場合の効果についての検証がまったくされていない、つまり事業の費用対効果が検証されていないという点に大きな欠陥があると言わざるをえません。撤去することにより、水害がどの程度軽減でいるかはもちろん、環境の再生による効果、及びそれらが地域経済に及ぼす波及効果などに、まったく触れてないことです。

fish住民や漁業者の懸念が検証されていない

地元坂本町の住民や漁業者が、撤去を強く求めるのは、ダム建設によって、頻繁に起こるようになった水害、鮎をはじめとする多くの魚介の漁獲量減少があるからです。撤去してもこれらが改善されることがないというのであればまだしも、存廃を検証する場で、撤去した場合の改善効果がなんら検証されていないというのでは、行政の仕事としてはお粗末すぎて、住民を納得させることは不可能です。

撤去により濁水がでる可能性があるのでその対策費はこれだけとか、水位が低下することによって護岸が崩れる可能性がある個所が増えたとか、係る経費についての検証だけはきちんとしてあり(必要かどうかは別にして)、存続費用が約20億円も大幅にアップしています。

特に環境に対する検証は、お粗末そののです。もともとこのPTに環境に関する部署が参加していません。球磨川に関する記述は「撤去に伴い、河床等の状況が魚類、徳にアユの生息に適しない場合も考えられるので、状況を見ながら対応することが必要である」という報告のみ。八代海の漁業に関する記述は、「定量的に把握することは困難である。しかし、長期的にみれば砂が自然流化し、それによって良好な干潟が形成され、魚介類に好影響を与える可能性がある」という趣旨の短い記述があるだけです。

当たりまえです。環境や水産に関する部署が参加しておらず、わずか1か月という期間で結論を出すことにそもそも無理があります。知事が、これを参考の一部にはしても、判断の根拠にすることがあってはならないことです。

fish環境の評価にはHEP分析の考え方も必要

アメリカに、マチリアダムの撤去計画があります。高さ80mの大型ダムです。撤去の是非や方法を検討するための、生態系回復プログラムの検証を10年以上やっています。この検証の一つにHEP(Habitat Evaluation Procedure)という手法を採用しています。HEPというのは、野生生物の生息環境から複数案を定量評価するために、複雑な生態系の概念を特定の野生生物の生息環境に置き換え、その適性について定量的に評価する手法です。すでに、HEPモデルも出来ています。

▼USGS(米国地質調査局)HPにてHSIモデルは公開されています。http://www.nwrc.usgs.gov/wdb/pub/hsi/hsiintro.htm

マチリアダムにおいては、スチールヘッドトラウトという魚を守るための生息条件を回復させるための条件をこのモデルを適用して、検証を行っています。球磨川でいうなら、アユが一番対象にすべき魚種になると思います。

さらに費用対効果の分析においては、HEP分析の他に、水質・騒音などの環境に対する影響、絶滅危惧種への影響、地域の経済開発、社会的影響などすべての視点から、すべての代替案に対して行います。

なにより進んでいるのは、このプロジェクトチームには、行政だけでなく研究者やNGO,地元代表(漁業者やサーファーなど含め)多くの人の参加のもと丁寧になっています。

熊本でここまで丁寧にやるということは困難かもしれませんが、50年間地元に与えた苦痛をさらに与え続けるかもしれないダムの撤去の是非を判断するには、あまりに短い検証期間であることには、誰も異論はないでしょう。

Matilija_dam_3 ▲まもなく、撤去される予定のマチリアダム 

今日の天気:cloud

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